東京高等裁判所 昭和41年(ラ)47号・昭41年(ラ)48号 決定
記録によると、原裁判所が、相手方の申立にもとづき、昭和四一年四月一九日午前一〇時債務者信和バルブ株式会社に対し破産宣告決定をしたことが明らかである。このように破産宣告があつた場合には、破産宣告に伴い債務者(破産者)の一切の財産が直ちに破産財団を構成し、その管理権が破産管財人に帰属することとなる結果として、破産宣告前に債務者の財産を対象として発せられた破産法第一五五条所定の保全処分は、その目的の消滅によつて当然にその効力を失うものと解すべきであるが、債務者以外の第三者の財産を対象として発せられた本件のような保全処分は、債務者に対し破産宣告がされたからといつて、当然に失効するとみなければならない理由は見出せない(したがつて、右保全処分を受けた第三者の処分に対する抗告の利益は消滅しない。)。しかしながら、破産法第一五五条にいう破産財団とは、破産宣告のあつた場合に破産財団を構成すべき財産を意味し、その財産は債務者に属するものに限られ、債務者以外の第三者に属するものは、たとい否認権行使の結果破産財団に属するに至ることのあるべきものでも、右財産に包含されないものと解するを相当とするから、右のような第三者に属する財産に対しては、将来の否認権行使を前提として同条所定の保全処分は許されないものといわなければならない。本件についてみるに、相手方の本件各保全処分申請の目的物は、抗告人が破産申立を受けた債務者信和バルブ株式会社から破産申立前譲渡を受けた第三債務者らに対する債権で、現に抗告人に属しているというのであるから、右債権について破産法第一五五条による保全処分をすることは許されないものであり、したがつて、相手方の本件保全処分の申請はいずれも不適法である。それゆえ、右申請にもとづいて前記債権の仮差押等を命じた原決定はいずれも失当としてこれを取り消し、右各申請を却下すべきである。
(川添 坂井 蕪山)